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著作権譲渡の仕組み創出で、ファンがアーティスト後押し 音楽の〝民主化〟目指す「tuneX」代表取締役 有本匡男さん

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音楽アーティストがもっと自由に活動できるようにしたい。自身の曲を自由に使えると思われがちなアーティストだが、レーベルが楽曲に関する権利を握っていることなどで、活動が制限されることも多い。佐賀県唐津市でtuneX 社を創業した有本匡男さん(48)は、楽曲の著作権譲渡の仕組みをつくり、アーティストが活動資金を調達する際の選択肢を広げることを目指す。

ファンが楽曲のサポーターに 「推し活」の延長で

--事業内容を教えてください。

有本さん 音楽の権利構造をもっとファンに開かれたものにしたいと考えています。楽曲には原盤権(録音された音源の権利)や著作権など複数の権利がありますが、これらをアーティスト自身がコントロールするのは難しく、資金調達の手段も限られているのが現状です。
 tuneXは著作権の一部をファンが購入し、保有・管理できるプラットフォームの構築を目指しています。これまでは一方的に「聴く」だけだったファンが、権利を持つことで「楽曲のサポーター」としてアーティストを支えられるようになります。

--日本にはほとんどないビジネスですか。

有本さん まったくないわけではないですが、まだまだ大きな市場にはなっていません。日本に先行して市場が拡大している欧米では、投資ファンドが有名アーティストの楽曲権利を資産として購入する動きが活発化しています。私たちはこれを一部の投資家だけでなく、一般のファンが「推し活」の延長として参加できる形に日本独自に進化させたいのです。
 まだ法的なハードルや音楽業界の慣習など課題は多いですが、将来的には楽曲が長く愛されることで生まれる価値を、ファンと共有できる循環を作りたいと考えています。


--起業のきっかけは。

有本さん 偶発的な事故(笑)が起点です。佐賀県唐津市に森を買って、貸別荘兼プライベートフェス等ができるイベント会場として運営をしようとしていました。そんな折、唐津市のスタートアップ登壇イベントに、観覧希望のはずが起業希望の出場者として申し込んでしまい・・・。別荘事業のパートナーに相談したら「昔、楽曲の著作権に関するビジネスを考えていた」と提案され、一緒に起業することになりました。

 私自身も20代の頃、インディーズレーベルの設立に関わったことがあります。その時、アーティストへのリスペクトが少ないと感じる事がありました。例えば、レーベル主導で「英語の歌詞を日本語に変えろ」「京都なので大文字(だいもんじ)を歌詞に入れろ」とか。もちろんそうではない事務所もたくさんあるでしょうが、私が格好いいと感じた楽曲がアーティストの意に沿わない形で変わっていくことに疑問を感じ、担当アーティストのひと組がレーベルを脱退したことをきっかけに仕事を辞めてしまいました。
 その時の「アーティストの才能を生かし切れなかった」という心残りもあり、提案に賛成しました。

音楽家に幅広い選択肢を

--著作権が譲渡が盛んになると、どうなりますか。

有本さん 音楽家が、自身のキャリアにおいてレーベルに所属することはもちろん、それ以外の多様な選択ができるようになると考えています。レーベル側も過去の楽曲を再活用する選択もしやすくなるでしょう。

 通常、多額の制作費が必要な場合、レーベルが資金を出して原盤権を保有するのが一般的です。その代わり、アーティスト自身の配信や二次利用が制限されることがあります。 もし、過去の楽曲や未発表曲の著作権の一部をファンに譲渡して資金調達ができれば、その資金で新たな作品の原盤権を自ら保有するというキャリアも可能になります。原盤権を自分で持てば、配信や活用の自由度が格段に上がります。
 また、埋もれていた名曲の権利をインフルエンサー等が購入・活用することで、リメイクなどを通じて再び光を当てるきっかけも作れるはずです。

--現在の状況は?

有本さん いきなり大物アーティストの著作権を扱うのは難しいでしょうから、まずは地域密着型で進めています。「地域で愛されていたけど全国では知られていない」といったアーティストを、地元ファンたちが著作権購入を通じて支援するイメージです。「地元アーティストの名曲を全世界に届けられたら面白くないですか?」と提案しています。

 そして全国 47 都道府県のライブハウス経営者などを「エバンジェリスト」として、地域の埋もれた才能を発掘し、支援したいファンとつなぐ役割を担ってもらいます。過去に佐賀で活動していたアーティストに声をかけたところ、「自分たちの曲が再評価されるなら面白い」と前向きな声をいただいています。単なる投資ではなく、楽曲という文化資産を次世代にバトンリレーしていく、そんな「音楽の民主化」を実現したいです。

〝バトンリレー〟実現を目指す

--音楽界をどうしたいですか。

有本さん 全世界の音楽著作権の市場が約2兆円程度、日本国内のインディーズ層の市場は数百億円とされます。その中で、著作権を正当な対価として資金に変えたいアーティストと、支援したいファンをつなぎ、そうした文化の醸成を目指します。

 そしてファンや地元企業が支え手となって楽曲をプロモーションし、地元に対価が入り、後進の音楽家の活動にも使っていく。全国でこのようなことが増えてくれば面白いだろうと思っています。

 音楽には人々の心を動かす力があります。音楽を聴けば当時を思い出したり、1曲で人生が変わったり。私たちは「楽曲のバトンリレー」とか「音楽の民主化」と言っていますが、アーティストとリスナーが一体となって音楽の未来を切り開いていくような世界観を描いています。

有本匡男さんプロフィール

1978年、京都府出身。97年に服飾専門学校を卒業後、ファッションショーやイベント等を手がける。京都でインディーズレーベルの創業にかかわり、新人発掘、販売戦略構築、マネージャーを担当。セラピストを育成する会社を設立するなどして、2024年12月から現職。

企業概要

株式会社 tuneX
事業内容:音楽著作権の活用、管理移転のサポート
所在地:佐賀県唐津市
創業:2024年

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